木村尚樹 -きむらなおき-
写真美術作家。
1987年に渡米。ニューヨークでの活動を経て、現在は東京を拠点に制作を行う。モノクロームによるオリジナルプリント作品を中心に発表し、イタリアをはじめとするヨーロッパ各地での制作経験を表現の基盤としている。
作品は、自身が「凪」と呼ぶ静かな状態への関心から生まれる。光と陰、時間と空間、人と世界との関係がわずかに揺らぐ瞬間に目を向けながら、写真が意味や解釈として定着する以前の気配を探求している。
その実践は「凪景(Lullscapes)」として展開され、見ることと認識することのあいだにある繊細な領域を問い続けている。
作品は国内外の個人および企業コレクションに収蔵されている。
Biography
木村尚樹(きむら・なおき)は、日本生まれの写真美術作家である。
幼少期を京都・西陣で過ごし、伝統文化と現代生活が自然に共存する環境のなかで育つ。その経験は、後年の作品に通底する、光や陰影、空間の質感への感受性を育む土壌となった。
15歳の春、ろうあ者の作品を集めた写真展を訪れた際、言葉を超えて見る者に語りかける写真表現の力に深い衝撃を受ける。その体験をきっかけに、自身の感覚や世界との関わりを表現する手段として写真の道を志すようになる。
写真専門教育機関で学ぶため上京し、写真表現の基礎を修める。その後、美学・美術史を学びながら芸術と視覚表現への理解を深め、さらなる見聞と経験を求めて1987年に渡米。大学院に修学後、ニューヨークを拠点に活動を開始した。
1990年以降、ギャラリーとの関わりを通じてヨーロッパでの制作を本格化させ、とりわけイタリアを中心に継続的な作品制作を行う。歴史的な建築や都市空間に宿る光と陰、時間の堆積を感じさせる空気感との出会いは、その後の制作に大きな影響を与えた。現在のモノクローム表現の基盤も、この時期の経験によって形づくられている。
木村の作品は一貫してモノクロームによるオリジナルプリントを中心としている。色彩による情報を抑えることで、対象そのものよりも、そこに漂う気配や空間の関係性、時間の痕跡に意識を向けることを試みている。
長年にわたりヨーロッパを主な舞台として制作を続ける一方、2015年頃からは日本を主題とした作品にも本格的に取り組み始めた。国内外の異なる文化的背景を往還しながら、自身が「凪」と呼ぶ静かな感覚に着目し、光と陰、時間と空間、人と場所との関係のなかに立ち現れる繊細な質感を探求している。
近年は、作品群「凪景(Lullscapes)」をはじめとする活動を通じて、写真が像として定着する以前の気配や関係性への関心をさらに深めている。その実践は、写真表現の可能性を問い続ける継続的な探求として展開されている。
作品は国内外の個人および企業コレクションに収蔵されている。

