Anthology rhymes IV - 私詩韻集 -
- cogito ergo sum
- 2021年3月16日
- 読了時間: 1分
更新日:2021年3月21日
凪の記憶
-solitudine-
雲間

昨日から吹いている風には、湿度があった。
夕方になって、古い博物館を訪ねた頃には、
すっかり雨になっていた。
重い空気の中、石の階段の先に少しの澱み(よどみ)を感じる。
踊り場で足をとめていると、柔らかい光に虹彩がすくんだ。
多分、雲の切れ間なのだろう。
いつもは忘れられている胸像が微笑だようだ。
吹き抜けからの風が流れ込み、
息が凪いだ。
誰にとはいわず、礼を尽そうと想う。
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